【米国テック深掘り|エヌビディア編 [3/7]】CEO・経営陣:ジェンスン・フアンの意思決定スタイル

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ポイントまとめ

ジェンスン・フアンは1993年の創業以来、30年以上にわたってCEOを務め続けている創業者CEOです。彼こそが「GPU企業をAIインフラ企業に変えた張本人」と言えるでしょう。

意思決定のスタイルは、ファーストプリンシプル思考(原理から考える)と実験重視が特徴です。詳細な長期計画を立てるよりも、「大きな方向性を決めて、走りながら学ぶ」アプローチを取っています。

組織運営は極めてフラットで「ワンチーム」志向。CEOが30〜40人もの幹部を直接マネジメントする体制により、意思決定のスピードは速い反面、属人化リスクも抱えています。


ジェンスン・フアンとは何者か

エヌビディアは1993年にジェンスン・フアンら3人によって創業されました。それから30年以上、フアンは一貫して社長兼CEOの座にあります。これは大型テック企業の中でもかなり珍しいケースです。

1999年のGPU発明、CUDAプラットフォームの開発、データセンター事業への転換、そしてAIブームへの対応。エヌビディアが経験してきた大きな転換点は、すべて彼がCEOだった時代の決断によるものです。

2020年代に入り、世界有数の大型テック企業の中でも「創業者CEOが現役で、経営権も実質的に維持している」という極めて稀な存在になっています。フアンは「GPUでゲーム市場を創造し、そのGPUをAI計算の標準エンジンに変えた人物」として、ハーバード・ビジネス・レビューなどでも高く評価されてきました。


意思決定スタイル:原理から考え、走りながら修正する

ファーストプリンシプル思考を貫く

フアン自身が繰り返し強調しているのが「first-principles thinking(第一原理思考)」です。スタンフォード大学などでの講演でも、「前例や常識ではなく、物理・数学・技術の原理から考える」と説明しています。

典型的な例がCUDAへの投資です。GPUがまだ「グラフィックス専用」とされていた時代、フアンは「大量の並列計算が必要なあらゆる分野に応用できる」と見抜き、CUDA開発に踏み切りました。AIブームのはるか前から「データセンターでGPUを動かす世界」を前提に、ハードウェアとソフトウェアの両面を揃えてきたのも、この思考法の延長線上にあります。

「長期計画」よりも「方向性と学習」

インタビューや記事を読むと、フアンは伝統的な「5カ年計画」型の経営をあまり重視していないことが分かります。

彼が優先するのは、詳細な長期計画を立てることではなく、大きな方向性を決めて学び続けること。状況に応じて柔軟に方針を修正できることを重視しています。これは「計画の精度」より「修正のスピード」を重んじる姿勢で、テスラなどにも見られる「実装ファースト型」の経営観に近いと言えるでしょう。

学習を前提としたリスクテイク

CUDAは初期、あまり使われず赤字覚悟の投資だったと報じられています。それでもフアンは「すべてのGPUをCUDA対応にする」という方針を変えずに継続しました。

これは短期的な採算よりも、GPUを「計算プラットフォーム」に進化させるという長期ビジョンを優先した判断です。結果として、この投資が現在のAI向けGPU市場における圧倒的な競争優位性の源泉となっています。


組織運営:フラット構造と「ワンチーム」文化

多数の直接レポートを持つ異例の体制

報道によると、フアンは30〜40人規模の直接レポート(直属の幹部)を持つという、非常にフラットな組織運営を行っています。

一般的な大企業では「CEO → 数名のCXO → その下にVP…」というピラミッド構造が一般的です。しかしエヌビディアでは、CEOがかなり多くの幹部と日常的に直接やり取りする形を維持しているのが特徴です。

この体制の利点:

  • 意思決定が速く、現場の最新情報がダイレクトにトップに届く
  • プロダクト・顧客・技術の変化に、経営トップがすぐ反応できる

リスク:

  • CEOへの負荷と属人化リスクが大きい
  • 後継体制をどう設計するかが中長期の課題

「One Team」文化と抑制された特権

最近の報道では興味深い事実が紹介されています。エヌビディアではVPクラスの幹部でも、エコノミークラスで出張し、専属アシスタントも基本的につきません。

巨大企業になっても「特別扱いを抑えたワンチーム文化」を維持することで、全員が同じ方向を向き、現場感覚を失わないようにする狙いがあると考えられます。


経営陣の役割分担

エヌビディアの実務は、カリスマ創業者CEOだけでなく、ベテラン幹部陣によって支えられています。

Colette Kress(CFO)
2013年就任。Microsoft、Ciscoでの経験を持つ財務・オペレーションのプロフェッショナル。AIブーム期の急激な成長を財務面からコントロールしてきた要の存在です。

Jay Puri(EVP, Worldwide Field Operations)
グローバルの営業・事業開発を統括。大手クラウド企業や産業顧客との関係構築を通じて、AIインフラ案件の拡大を推進してきた「現場側のトップ」です。

Debora Shoquist(EVP, Operations)
サプライチェーン・製造・IT・物流を統括。AI用GPUを大量供給するための供給網・工場・品質管理を見る責任者です。

シンプルに整理すると:

  • 技術ビジョン = フアン
  • お金と投資 = Kress
  • 販売 = Puri
  • 製造 = Shoquist

という分担になっています。「スーパースターCEO」のもとで、経験豊富な経営陣がしっかりと支える構造です。


リスク許容度:長期の「賭け」をどう見るか

長期投資を許容する文化

CUDAやAI向けGPUへの投資は、最初は収益に結びつかず、しばらく赤字覚悟の投資でした。それでも「全部のGPUをCUDA対応にする」と決めて継続したのは、長期の「賭け」を容認する企業文化があったからです。

ここから見えるのは、「当たりを引くまで試行錯誤を続ける前提のリスク許容度」の高さです。

増大する外部環境リスク

一方で、最近は新たなリスクも浮上しています:

  • 輸出規制・地政学リスク(特に中国向け高性能GPU)
  • 製造拠点の大規模な米国移転計画(数千億ドル規模と報じられる)

フアン自身が「AIは数十兆ドル規模の市場になる」「数十年スパンの投資だ」と語る中、一人の創業者のビジョンにどこまで依存するかは、長期投資家として意識しておきたい重要なポイントです。


投資家として押さえておくべきこと

「原理から考える」CEOのもとで長期の賭けが当たっている会社。成功時のリターンは大きいですが、外れた時の振れ幅も同様に大きいと言えます。

組織はフラットでスピード重視のため、ビジネスサイクルの上下動も速く表れやすい構造です。

投資家としては、以下の点を定点観測することで、「どこまでこのリスクを許容できるか」を判断していくことが現実的でしょう:

  • フアン個人への依存度
  • 後継者育成・権限委譲の進み具合
  • 規制・サプライチェーンの変化

1ステップ実務

エヌビディアのIRサイトで「Governance → Management Team」ページを開き、CEO・CFO・Operations・Field Opsの4人の役割と就任年をメモしておきましょう。

🔗 NVIDIA Investor Relations – Management Team


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免責事項

本稿は一般的な企業理解のための情報提供であり、特定銘柄の推奨・売買助言ではありません。将来の株価や配当を保証するものではなく、投資判断は必ずご自身の責任で行ってください。

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この記事を書いた人

“守りは投資信託、攻めは米国テック”。そんなコア・サテライトで
ムリなく増やす方法を発信しています。新NISA×積立×仕組み化で、
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