ポイントまとめ
- テスラを見るときは①自動車の粗利率 ②エネルギー事業の伸び ③CAPEXと工場稼働率をセットで追うと全体像がつかめる。
- 粗利は「価格調整 → 在庫 → 稼働率 → 工場固定費」の流れで変動しやすく、価格だけを見て判断すると読み違える。
- 設備投資(CAPEX=工場や機械などに使うお金)は一時的にキャッシュを圧迫するが、生産量を増やせば”スケールの経済”で回収できるという設計になっている。
テスラで最初に見るべき指標
テスラは一見”車の会社”に見えるが、損益計算書とキャッシュフローを観察すると「EV+エネルギー+ソフトウェアを、ひとつの製造プラットフォームで回す会社」という構造が見えてくる。まず押さえておきたいのは次の3つだ。
1. Automotive Gross Margin(自動車粗利率)
車両価格、原材料コスト、販促・物流の効率で大きく変動する。2桁台前半まで落ち込むと「価格競争の影響」が顕在化していると判断できる。
2. Energy Generation and Storage Revenue / Margin(エネルギー事業の売上・利益率)
エネルギー事業の売上が伸び、かつマージンが改善しているか。ここが成長すると全社の利益構造が改善する。
3. Capital Expenditures(CAPEX)と生産台数の伸び
工場やバッテリーラインを増強した分だけキャッシュが流出するため、「投資額>生産増」の期間が長期化していないかを確認する。
指標どうしのつながり
1. 粗利率と在庫
テスラは価格を機動的に変更するため、値下げ→在庫調整→粗利圧迫という短期サイクルが起きやすい。ここで見るべきは「在庫が積み上がっているのに、さらに値下げしていないか?」という点。この状態が続くと、粗利率は想定以上に削られる。
2. CAPEXとスケールの経済
ギガファクトリーのような大型投資は、稼働率が上がるほど1台あたりのコストが下がる仕組みになっている。つまり、CAPEXは「投資の大きさ」だけでなく「それを回転させるスピード」とセットで見る必要がある。生産台数が急伸している四半期は、前四半期までのCAPEXが効果を発揮していると読める。
3. エネルギー事業の伸びと全社利益
自動車事業が値下げモードに入っていても、エネルギー導入量(特にMegapack)が伸びていれば、事業ミックスの改善で全社マージンを維持できる。この”第二の柱”をどこまで育てられるかが、テスラの2025〜26年の利益安定性を左右する。
よくある誤解
- 「粗利が落ちたら終わり」ではない
価格調整やモデル切り替え時に粗利が低下するのは、テスラの運営上よくあるパターン。問題はそれが何四半期も続くかどうか。 - 「CAPEXが多い=無駄遣い」でもない
新工場・新ラインを一気に立ち上げる文化のため、単年で見ると重く感じられる。生産・納車がそれに追いついているかを必ずセットで確認する。 - 「エネルギーはオマケ」でもない
最近はむしろこちらの成長が顕著で、粗利も改善している。四半期資料での構成比を見逃さないこと。
1ステップ実務
テスラIRの四半期開示ページで、「Quarterly Update」内の”Automotive gross margin” “Energy storage deployments” “Capital expenditures”の3つだけを毎回スプレッドシートに記録する。
🔗 Tesla IR — Quarterly Update / Disclosure
免責事項
本稿は一般的な企業理解のための情報提供であり、特定銘柄の推奨・売買助言ではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。



